第12章 空蝉の頃$(不死川&煉獄裏)
「杏寿郎様、もう。髪がぐしゃぐしゃになってしまいます」
「悪い悪い。だが俺としてはこうして、君と触れあえる事が嬉しいんだ」
「ずるいです。杏寿郎様…///」
むぅと不貞腐れた顔をする彼女に煉獄は続ける。
「今の俺があるのは君のおかげだ。改めて礼を言わせてくれ」
「頭を上げて下さい、杏寿郎様。運が良かっただけですよ。私だって…助けられなかった…方たちがいるんですから…」
「藤姫殿…」
「私は姫じゃありません。ただの慰み者です…」
ぐっと抱き寄せられる。
「今まではそうでも、これからは違う。近い内に必ず君を嫁に迎えるからな」
「杏寿郎様…でも、私…」
「俺は本気だぞ?」
その目に見つめられると、何もかも、熱で溶かされてしまいそう。
「何が本気だァ?クソが」
背後からの声に振り返れば、不機嫌そうな顔で現れた彼を見て那岐が声をかける。
「不死川様」
「おい、那岐。行くぞ?」
「はい…」
那岐が煉獄家と不死川の屋敷を行き来するようになったのは、半月程前からだ。