第4章 憲紀君
神楽琴音。
この平凡な名前が私の名前。
御三家の産まれでもなければ、呪術師の家系でもない。
突然、呪力と術式を授かり産まれ、そして、その特殊な術式のおかげ?いや、そのせいで、加茂憲紀という男の許嫁となったのが、去年の4月。
なんのバックアップもない私に、御三家が味方に付くのはありがたいことなのかもしれないし、
御三家という言葉に圧倒されて、呪術界を知らない両親が了承してしまったということも、仕方ないとは思うのだけど…
すごく、正直に心の中で言葉にしてしまうと、怖いのだ。
彼のことが。
綺麗な顔立ちだとは思うけれど、なんとも話しにくいというか…
一応、同じ歳なのにしっかりとし過ぎた貫禄に圧倒されてしまうのだ。
悪い人ではないのは分かっている。
一回だけ一緒になった任務で、明らかに私を庇ってくれたし。
『はぁ…』
「どうしたんですか神楽先輩」
『ん?あ、伏黒君……交流会が憂鬱で』
「えー、なんでなんで?私、結構楽しみですよ!」
「野薔薇、恵、訳アリだ。ほっといてやれ」
『ま、真希!?そんな含みを持たせないで!?』