第7章 伏黒君
もっとしたかったのに…
……嘘。
今、私、何て思った…?
あんなに恥ずかしくて恥ずかしかったはずなのに。
思わず口元を両手で覆えば、伏黒君が上体を起こしてフッと笑っていて…
その刹那、瞼は開いているはずなのに黒以外何も見えなくなり、どくりと心臓が脈打つ。
!?
な、何?!ここ…!
あれ……?
眩しい?
瞼をぱちぱちとさせて目を慣らしていれば、"大丈夫か?"といういつも通りの伏黒君の声がして、ふわりと身体が持ち上がる。
『ひゃっ、わ、私、多分歩けるよ?
…あれ?そ、外に出れてる!?』
「あぁ。神楽をその気にさせたからな。
…その、悪かった。任務とはいえ、あんな事、して」
『!さ、最後まで、じゃなくて…
"私がその気になれば"良かったんだ…』
私がその気になったという事実が、外に出れた事によって彼に伝わってしまったのだと思うと複雑な気分になってしまう。
お腹の奥がきゅっとなるような感覚と少しの寂しさを感じながら彼にしがみつくと、彼の身体が熱いままであることに気付いてしまう。
私が気を使わないように、いつも通りにしてくれてる…?
お姫様抱っこで運ばれていることが恥ずかしかったはずなのに、それよりも、彼の優しさが心にじんわり広がっていく。
「もうすぐ帳の端だ。五条先生と伊地知さんがいるはずだから、顔、見られないようにしろよ。真っ赤だ」
『う、嘘…!恥ずかしい…』
「嘘じゃねぇ…帳出るからな」