第6章 七海さん
「念のためですよ。それでは私達はこれで。
…お大事にして下さいね、琴音』
!!
琴音って、名前で呼んでくれた…
それに、敬称も付いてなかった!!
先程から熱っていた身体がさらに熱くなり、扉から出ていく七海さんを目で追う事しかできない。
私、生き残ってて良かった…!
「ちょっと琴音?僕のこと忘れてない?」
『わ、忘れてません…!
五条先生、私、幸せすぎてどうしよう』
「へぇ?分かっててもちょっと妬けるなぁ。僕の生徒なのに」
そう上がった口角をそのままに、私のベッドの先程座っていた位置にもう一度座り直すと、私の後頭部に手を添える五条先生。
『先生…?』
ゆっくり先生が顔を私の耳元に近付けて口を開く。
先生の息が耳にかかって身がぎゅっと縮こまる。
「七海のモノになる前に、僕に襲われないようにね?」
!?!
ど、どういう、こと?
そう思いながらヒラヒラ手を振って病室を出ていく先生を、またもや口を開けないまま、目で追い続ける事しか私はできなかったんだ。
to be continued…