第5章 夏油君と五条君
コンコン
『はーい!』
硝子ちゃんだ…!
自室の扉がノックされて、返事をして立ち上がる。
今日の午後の授業は勝手に終わった事にして、部屋でくつろいでいたところだった。
授業のノートをコピーしにくるって言ってたからかな?
そう扉をなんの躊躇いも無く開ければ、
『!げと…んっ!んー!』
そこに居たのは約束をしていた硝子ちゃんではなく、先程警戒を解いたばかりの人が。
そんなことよりも、
キス、されて…!?
彼の名前を呼び終わる前には部屋に滑り込まれて、扉と彼に挟まれる形となる。唇を塞がれているその後ろで、カチャリと鍵を閉める音がした。
「約束通り、貰いに来たよ。今日は邪魔は入らない。」
『どういう…』
「琴音を抱きにきた、という意味だが?」
『!!』
ナチュラルに笑顔に言ってくるのが逆に怖い…
後ろに後ずさろうにも、扉に軽くコツンと頭をぶつけてしまう。
背中にひんやりとした感触。
夏油君がかけた鍵を再び開けようとこっそり手をかけようとするが、
「琴音?」
そうニコリと微笑まれて、背筋が凍る。
悟の時は常に逃げようっていう意思があったけれど、それを全てへし折られた、そんな感覚に陥ったのだ。