第3章 3~鬼舞辻無惨~※裏あり(鬼舞辻無惨)
その美しさに呆気に取られていると、突然腕を引かれ、後頭部に痛みが走った。そしてそのまま、私は気を失ってしまった。
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「う…………。」
目が覚めるとそこは路地裏のような場所だった。
「ここは……?」
立ち上がり周りを見渡すが誰もいない。
確か、誰かに腕を引かれて……
「いたっ…………」
後頭部が痛い。叩かれて気絶したのだろうか。
「とにかくここから出ないと……!」
ここから出ようと歩き始めると、すぐ近くに鬼の気配を感じた。
「……っ……」
振り返ろうとした瞬間、壁に体を押し付けられ、体が固定される。
この感覚は……!
「鬼舞辻無惨……」
「ほう、私のことを知っているか」
「憎い仇ですもの……」
「その仇にこうして取り押さえられ、身動きひとつ取れないとは、なんとも哀れだな鬼姫。」
私が無惨を睨みつけると、無惨は笑いながら顔を耳元に近づけた。
「鬼姫に会うのは久々だな、どこに隠れていた?ここ100年近くも。人間の分際でよくやるものだ。」
「消えろ……」
「まぁそう言うな、私は鬼姫がいなくても人を殺し、食べることに困ることはないが、鬼姫は一種の趣向品だ。じっくり楽しむとしようでは無いか。」
無惨は私を正面に向かせると両手を抑える。そしていやらしく笑った。
私の力は上弦や下弦の鬼、そして無惨には更によく働く。膨大な力と共に、想像も出来ない快楽を私の体は強い鬼に与えることが出来る。
強い鬼の媚薬作用が私に強いように、私の体も鬼が強ければ強いほど鬼の体に快感を与える。それを無惨は趣向品と言うのだ。
代々利用されないように隠れて生活してきたが、無惨や上弦の鬼の餌食になった者も少なくない。その快楽を知ってる鬼は鬼姫を手放さない。
殺されることはないとはいえ、一生慰みものなんて、生き地獄でしかない。
何とか逃げ出さないと…………
私が思考を巡らせていると、無惨は私の顎を手で上に上げた。
「この状況で考え事とは、随分余裕だな鬼姫。」
「あなたの顔みてるくらいなら妄想してた方がましですもの。」
「さていつまでその強気が続くかな」
無惨は私に顔を近づけると容赦なく口付けた。
「んっ…………」