第63章 紫電の言伝を茜色の君へ
「どうした!もう終いか!!」
俺の目の前にはバタン、バタン、と倒れこんだ隊士が6人。
それから片膝をついている女性隊士が1人いる。
半年前の鹿島神宮での任務以降、自分の継子にしてほしいと言う隊士が急増した。
恋人であり、今は婚約者となった七瀬の活躍が一気に広まった為である。
「ではこちらから行くぞ」
俺は一旦、自分の中にしまい込んでいた闘気を再度練りあげていく。足元からゆらり……ゆらりとそれが静かに上昇して来た所へ ——
「杏寿郎さん」
縁側から自分に声がかかる。その声の主は七瀬だ。
彼女が声をかける時と言うのはこの場合理由は1つ。
「む?またやってしまったか?」
「はい……。今日は一段と凄いですよ」
苦笑いをしながら草履を履き、俺の元に駆け寄ってくる。
「せっかくたくさん継子志望の方が来てくれるのに、それじゃあまた途絶えますよ。一度休憩を入れて下さい…美波、お願い出来る?」
7人いる中でたった1人だけ。
片膝をついている女性隊士に声をかけると、七瀬は千寿郎を呼んでくるように頼んだ。
美波と呼ばれた少女がいなくなると、今度は倒れている隊士の元に駆け寄り、1人1人に声をかけていく。
「うわあ……みなさん見事に気絶してますね。一旦道場に連れていきましょうか。杏寿郎さんも手伝ってくれます?」
着物の袖をたすき掛けにした七瀬が俺にも声をかける。
「承知した!!」
——— それから30分後。
隊士達を無事道場に移動した後、千寿郎と美波少女が後はやると申し出てくれたので俺と七瀬は庭へと戻って来た。
そして2人で縁側に並んで座る。
「お疲れ様でした。お茶と甘味を持ってきましたよ。ご一緒しても良いですか?」
「もちろんだ」
俺は七瀬が持ってきてくれたカステラを1つ手に取ると、早速口に入れる。横では彼女も一口カステラを頬張ったようだ。
「うまい!!」 「うん、本当においしいです!」
2人の声が頃合いよく重なった。
好物を食べている時の七瀬は本当に良い顔をする。
じっと見ていると、その視線に気づいて俺の方に顔を向けた。