第61章 茜は緋(あけ)に一生恋をする
「それにな、七瀬の呼吸は無くなったわけではないぞ。俺のここに共にある物だ。今までもこれからも」
トントン……と右手人差し指で示した先は彼の心臓。
心の炎が燃える場所だ。
「君が使用して来た12…いや13の型は決して消えはしない。その軌跡は呼吸帳にも記してあるし、俺の脳にも瞳にも焼き付いている」
続けて彼の指が金色の頭を指し、それから私がいつも”日輪”と形容をしている双眸は右、左の順に指が辿っていく。
「ありがとう…ございます……」
胸と目頭がジンジンと熱くなって来る中、杏寿郎さんは私の左手をそっと持ち上げる。
目を閉じてこれからの未来を願うように。
永遠を誓う薬指に口付けを落とした後、私を上目遣いでジッと見つめて来た。
ドクン……!
今日1番と言って良いだろう。
自分の心臓が弾むように大きく大きく脈打ったかと思うと、彼が私の顎を右手でくいっと掴む。
射抜くような日輪の双眸。その両目の中に映っているのは自分の焦茶色の瞳だけだ。
「嫁に来い、七瀬。俺は世界で1番君を愛している」
“はい” と言う返事は杏寿郎さんからの口付けで塞がれてしまった。
……………私も好き………杏寿郎さんが大好き。
———愛しています——
その思いを精一杯に込めて彼の首に両腕を回し、暖かく優しい太陽の光のように降り注ぐ口付けに必死に応える。
『私の旦那さんになって下さい』
後でこの言葉を彼に直接伝えよう。
—世界で1番大好きな炎のあなたに情熱を —