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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第60章 茜が沈む、緋(あけ)が昇る ✴︎✴︎


『後は……』
彼女の死体のすぐ側に転がっている小枝を持った男は、地面に何かを記していく。


『七瀬、お前の行く末はいつだって俺の手中の上に成り立ってんだよ』

書き終わった小枝をぽいっと投げた男の左手には赤く色づく心臓があった。今しがた命を奪われた少女の物である。
既に脈打つ事はないその物体を男は一口齧って、ゆっくりと咀嚼する。


にいっとその唇に綺麗な狐が描かれた。
そのままバク、バクと心臓を喰らい始めた男は、極上の甘味を味わうようにして、最後の肉片をゆっくりゆっくり咀嚼した後、ゴクンと飲み込む。

『10代の女は何でこんなに美味いんだろうな。生娘だと更に深みが増す………』



『夕葉、何をしている。その身を直ちに私に捧げよ』

その時夕葉の脳内に低いが、耳馴染みの良い声が響いた。
彼を呼んだ男は無惨である。

『人間の女で1番美味い部分は心臓だ。それを取り込んだ俺の体なら、普段よりもきっと満足して頂けるはず……』


右拳でグイッと口元を拭った夕葉は琵琶の鳴る音が響く中、少女から奪い取った勾玉と共にスウッと姿を消す。


“活殺自在(かっさつじざい)”
巫女の近くの地面にはそう、文字が刻まれていた。


















「……勾玉に銅鏡ですか」
「うん、そうなんだ」
それから2週間後の11月半ば過ぎ、紅葉が色づき始めた頃の事。

杏寿郎は耀哉に呼ばれ、鬼殺隊本部に来ていた。
耀哉の隣には妻であるあまねが座っており、彼を支えるように右手を背中、左手を胸の中央に置いている。


「今月初旬に鹿島神宮で奇妙な事件があったよね?」
「ええ、巫女が心臓のみ体から抜き取られていた件だと伺っています。唇、両手の爪が茜色で塗られていて、白衣が——」

“八雲柄且つ青柳色に染まっていた”


「七瀬に見立てている気がしないかい?そして巫女の側に書かれていた文字は”活殺自在”」

「自分の思い通りに扱うさま。生かすも殺すもこちらの思うがままである。確かこのような意味合いだったかと……」



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