第12章 炎の柱 vs 炎の継子 +
雲一つない、晴天の昼下がり。
七瀬と杏寿郎は煉獄邸から2キロの距離にある川のほとりに準備運動がてら、走って来ていた。
以前、実施すると言っていた特別稽古である。
「天気も良くて申し分がないな。今日の稽古だが、俺から一本。又は体のどこかに当てたらよしとする。木刀とは言えど、もちろん容赦はしない」
「俺を殺すつもりで来い」
杏寿郎はそう言うと七瀬に木刀を渡す。
「……はい」
彼女はゴクっと唾を飲み込みながら受け取ると、お互いに一礼をして木刀を構える。
『師範、いつもと目が全然違う……本気だ』
七瀬の目をじっとそらす事なく、見据える杏寿郎。
そして ——
「どこからでもかかって来て良いぞ」
フッと笑った彼は自分の闘気を少しずつ練り上げていく。
足元からジワリ、ジワリと熱風が体に上がって来る、と同時に金色の髪がふわっとはためく。
そして杏寿郎の周りには陽炎がゆらり、ゆらりと揺らぎ始めた。
『すごい熱風だな、木刀でもこれだけ闘気が練り上げられるなんて。さすが炎柱……』
七瀬もすうっと息を吸って前にいる杏寿郎を見据える。
目をつぶって、自分の中にある闘気を解放するように思い描くと、彼と同じようにじわじわと足元から熱風が上に上がって来た所で目を開ける。
『よし、これで準備は出来た』