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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第59章 2人の炎をあたためて ✳︎✳︎




「はあ、はあ… どうした?」
彼女の右足をゆっくり下ろした俺は息を整えつつ、恋人に視線をやる。


「いえ……綺麗だなあって……」
「?俺がか…?」

綺麗とはどう言う事なのか。

「……はい」
「後で聞かせてくれ」


彼女の左足にべったりとついている自分の欲をお湯で洗い流し、石鹸で泡立てた手拭いで七瀬の体を再び綺麗にしていく。
恋人の体に触れると、自然に情欲が高まってしまうのだがここは我慢。耐えるべし。

自分の体も洗い流し、ようやく湯浴みを終えた俺達は就寝するべく浴室を後にした。










「して、俺が綺麗とは?宇髄や冨岡がそう形容されるのは納得が行くのだが……」

千寿郎が用意してくれた敷布団。
彼女と隣り合って横になっている。さて綺麗とは如何なる理由なのか?


「いえ、杏寿郎さんは綺麗ですよ。顔立ちは勿論、呼吸もそうだし、あの……」

“体躯も…”

この4文字を早口で捲し立てるように伝えられる。思わず笑いが飛び出してしまった。



「とにかく息が止まりそうになりましたからね」
「奇遇だな、俺も実は……」

今度は俺から秘密の話を打ち明けるように、恋人の左耳に耳打ちだ。


「えっ、あの時ですか?」
「ああ、正直呼吸をするのを忘れそうになった」

「本当に?」
「何故ここで嘘をつかねばならない」

鳩が豆鉄砲を食らった。このことわざ程今の彼女にふさわしい言葉はないだろう。

「七瀬は普段愛らしいが、俺の腕の中にいる時はとても綺麗で麗しいからな」

それは俺だけが知る、俺しか知らない、愛おしい君に対する形容だ。

「んっ、」

滑らかで弾力がある左頬を撫で、そっと口付けを贈る。
こうする度に俺は君との口付けが好きになっていく。


「そろそろ寝よう。もう3時だ。2時間後には朝稽古だぞ」
「あっ、はい。そうですね………」


“おやすみ” “おやすみなさい”

挨拶を交わし、俺にぴったりと小柄な体を密着した後に疲れから急速に寝入ってしまう七瀬。

安心しきった表情を見ると、自分にも睡魔がやって来る。

「おやすみ」

もう一度だけ彼女に声をかけ、七瀬を抱き込むと心地よく就寝した。


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