第59章 2人の炎をあたためて ✳︎✳︎

「あんっ……急にうごか……」

七瀬が瞳をぎゅっと閉じるのと同時に甘い吐息をこぼす。

「すまん」
「もう……」

こう言う時に謝罪の言葉はそぐわない。
わかってはいるのだが……それしか思いつかなかった。


「以前も言っただろう？君と１つに繋がっているこの瞬間が本当に愛おしいんだ。だからついな……」

「それは私も同じだから少しはわかりますけど……」

む！わかってくれているのか！
それにしても、だ。
七瀬のこの表情はやはりかわいい。


「半分はその顔が見たかったのもある！」
「……………」

素直に思いを伝えると、途端にそっぽを向く七瀬。
本当に申し訳ないが……俺は君のその顔がたまらなく好きだ。
ちう……と小さく音を響かせる口付けを贈り、こう伝える。


「七瀬がかわいくて仕方ないんだ」

結局、行きつく所はこの思いだ。
君はいつだって愛らしいし、いつだって俺の心を良いようにも悪いようにも動かしてしまう。

「んっ……」

再度口付けを落とし、その後彼女の両手をそっと絡めると、それに合わせるように七瀬も両手を絡めてくれた。
綺麗に色づいている茜色の爪先にありったけの愛おしさを込めて、口づけを複数落とす。


「動くぞ」
「あっ……んっ！」

律動を始めると１つになっている結合部からとても艶っぽい音が空気を震わす。
2人で鳴らす水音が聞こえる度に自分の体温も上がる感覚だ。

そして、俺の昂りを七瀬がきゅうきゅうと締め付けて来る。


「はっ……きつい…が、心地よい……」
「きょっ、じゅ……、はぁ…私も…」

“気持ちいい”
きっと彼女はこう伝えたかったのだと思う。

“俺もだ……”
その思いごと、気持ちを込めて恋人の唇を塞いだ。

繋がった２つの入り口、絡めた両手、パン、パン、と打ち付ける場所を支配するのは互いを求める情欲のみ。

もっともっと七瀬を感じたい……

「えっ、杏寿郎さ……」

絡めた両手を外し、彼女を自分の膝の上に大切に乗せた。
そこには俺しか見る事ができない、俺しか知らない恋人の表情があった。


「伝えていなかったな、君のここの曲線はとても綺麗だ」

腰から尻を両手で撫でながら、毎回彼女と愛欲を交わす度に思っていた事をようやく伝える。