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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第59章 2人の炎をあたためて ✳︎✳︎



「後ろも6つですか?」
ゆっくりと唇を離した所で真下にいる七瀬から声がかかった。

「いかにも」
ふっと微笑みが出る。彼女の体の前に6つ、後ろに6つ、合計12個の花を施した為だ。

「君は9つだった呼吸を3つ増やしたからな」
「そうですね……」
一呼吸間を置き、あの……と恋人からまた声がかかる。

「いえ、やっぱり良いです」
「ん?言いかけてやめるのは七瀬らしくないな」

予想するに、咲かせた花の大きさの事だろう。ここでまた自分の中で加虐心が湧き上がり、ついこんな事を俺はしてしまう。

「どうした……?」
七瀬の右の耳元に問いかけと一緒に口付けを落とすと、ビクッと体を震わせる彼女がかわいい。
さて、どんな顔をしているのやら。

「ちゃんと聞かせてほしい」
それを確認するべく、くるっと七瀬の体を自分の方に向かせてみると、頬が真っ赤だ。
林檎のように色づいた両頬を包み込み、桃のように瑞々しい唇に優しく口付けを落とせば、更に熟す頬と唇。



「いや、その……」
コソコソコソ……と俺の左の耳元にその疑問が落とされる。

“さっき前につけた花の大きさより大きいのか、小さいのか”
そんな問いかけだった。
ゆっくりと口を離し、再度自分を見る七瀬。
先程より赤く色づいた頬が愛らしい。


「……………もちろん同じ大きさだ!」

そう伝えると途端に顔を下に向け、何やらぶつぶつと呟いている。
合間に聞こえた単語は“胡蝶”の名前だ。


「杏寿郎さん」
「どうした?」

彼女の左頬をそっと包み、ゆっくり撫でると瞳をゆらゆらと揺らす七瀬。


「いえ、なんでもないです……」
もう耐えられない。そんな表情を見せると俺の胸に顔をうずめて来た。




……昨日の任務帰りにたまたま胡蝶に会った。3日後、七瀬が蝶屋敷に来る事になっているが、背中の傷について何か本人から聞いたりするのか?と。

「特にない」
そう答えると胡蝶はやや心配そうに俺に言って来た。

“これは仕方のない事なのですが、女性隊士の殆どが傷を気にする傾向です。七瀬さんは大きな傷が背中にありますよね。
あの傷を負った日に桐谷くんが亡くなった。それが彼女を縛る枷(かせ)になっていないか。私はずっと気になっているんです”


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