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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第59章 2人の炎をあたためて ✳︎✳︎


〜杏寿郎から見た景色〜

※ 657ページからの彼目線です。


今夜の任務が終わり、日付が変わった。
家に入った俺はまず七瀬の草履がある事を確認すると、彼女の部屋に向かう。
襖に手をかける。そしてスッと開けば、丁度襖を開けようとしたのだろう。目の前にやや驚いた様子でこちらを見上げる愛しい恋人がいた。

「お帰りなさい!ご無事のお戻り何よりでした」

頭の先から足先までを視線で辿り、俺の体を確認した彼女は笑顔を見せる。
そして華奢だが、筋肉が程よくついている両腕を自分の背中に回して来た。途端に鬼殺でささくれだっていた心がフッと綻び、自然と笑顔になれる。



「ただいま、七瀬。君も怪我はないようだな」
今度は彼女の背中に両腕を回し、ぽんぽんと優しく叩く。


「はい、大丈夫です。姿を隠すのが上手い鬼でしたけど、伊之助と共闘して討伐出来ました」

「そうか」
彼女の左頬をゆっくり撫でると、押し寄せて来るのは七瀬を求める情欲。
2人で大切な時間を過ごしたい……そんな強い気持ちだ。


「あの、湯浴みに行こうかと思っているんですが」
「だろうな!手拭いと着替えを持っているからな」

「…………」
「…………」
沈黙が俺と彼女をそっと包む中、襖を後ろ手で閉め、一歩足を進め、七瀬の部屋に入った。

「杏寿郎さん……?」
「目張りはもう落としてしまったのか」

よく似合っていたからもう少し見たかったのだが。
残念だ。

「はい、任務もありましたし…。あ、でも」
「ん?……」

左瞼に触れていた右掌をそのまま彼女の頬へと下げる。


「これは落とすの忘れちゃって。そのまま行っちゃいました……」
「む……と言う事は君の爪紅を猪頭少年は見たのか」


落とすのを忘れた。これは事実だろう。七瀬は隠し事が出来ない性質だ。
しかし、俺の心は反応してしまう。

左手で彼女の右手をそっと持ち上げる。
女子らしい繊細な指先。そして綺麗な形の爪には、先日小間物屋に2人で行った際に購入した茜色の紅が5つ。

これは今朝自分が七瀬と出かける前に塗った物だ。


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