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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第59章 2人の炎をあたためて ✳︎✳︎


「後ろも6つですか?」
背中から彼の唇が離れた所で私は声をかけた。

「いかにも」
ふっと微笑んだ様子が杏寿郎さんの顔を見なくても容易に想像出来る。

前に6つ、後ろに6つ。合わせると12個だ。

「君は9つだった呼吸を3つ増やしたからな」
「そうですね……」

そして気になるのが彼が付けた赤い花の大きさである。

「あの……いえ、やっぱり良いです」
「ん?言いかけてやめるのは七瀬らしくないな」

どうした……?と右の耳元に低い囁きと共に口付けが落ちる。

「ちゃんと聞かせてほしい」
くるっと体を彼の方に向かされると、両頬を包み込まれてまた唇に優しい温もりが降った。


「いや、その……」
コソコソコソ……と杏寿郎さんの左の耳元に疑問を口にした言葉を伝える。
ゆっくり口を離し、再び彼を見るとこの上ないぐらいの笑顔だ。


「……………もちろん同じ大きさだ!」

ああ、やっぱり……。またしのぶさんにからかわれるな。
何故この頃合いに?と言いたくなる。明後日は丁度蝶屋敷に行く事になっているのだ。


「杏寿郎さん」
「どうした?」

左頬をゆっくりと包まれ、柔らかく撫でられる。するときゅっと鳴るのは甘い甘い胸の鼓動。

「いえ、なんでもないです……」
私は彼の胸に顔をうずめた。頭上からはくつくつと笑う恋人の声。
きっとわかっててやったのだろう。
しばらくそうしていると、彼がこんな事を言って来る。


「そう言えば、君は同じ事を俺にすると言っていなかったか?」










「…………」
「七瀬?どうした?」

先程と体の位置が変わり、私は杏寿郎さんの上から彼を見下ろしている。
こちらを逸らす事なく、じいっと見つめる視線。迷っていると両頬を包まれて口付けが1つ届いた。



「君のここを降らせてくれ」

トントン……と唇に彼の右人差し指が当たる。
ドクン、と高鳴る鼓動。

「優しい雨が欲しい」
そして私は彼の綺麗な鎖骨にゆっくりと口付けを落とした。




「んっ……はあ……」
3回そこを強めに吸って静かに顔を上げると現れたのは赤い花が3つ。向かって右側、横並びに等間隔に咲かせたそれらを私はそっと撫でる。


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