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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第57章 緋星(あけぼし)喰われしその時に、心炎で天蠍を衝け ✴︎✴︎


「あっ……上がってますね。今日はやっぱり特別綺麗に見えますよ」
「うむ!綺麗だな。しかし七瀬…俺は先日とあまり変わりがないように見えるが……」

私はすぐ後ろにいる彼をチラッと見ながら笑ってしまう。

「杏寿郎さん、こう言う時の返答は”綺麗だ”だけが適切だと思います」
「む?そうなのか?」

「はい!」
にっこりと笑いながら、彼に向かって頷いた後は再度、明けの明星に目線を戻す。

因みに2人の折衷案は、と言うと——
縁側に座って体をくっつけたまま見る…と言う事に落ち着いた。
だから、私の後ろから杏寿郎さんが包み込むように抱きしめてくれている。

回っている両腕にそっと自分の2つの掌を当てた。すると私の髪に顔を埋める彼。思わず身を捩ってしまう。

「すまん、くすぐったいか?」
「はい…でもこれ、好きです……」

杏寿郎さんにしてもらう事はなんだって好きだけどね…
これはちょっと口に出すのが恥ずかしかったので心の中に留めた。

「そう言えば、明けの明星はいつまで見れる?」

「えっと…今回は夏に見え始めたから、2月ぐらいまで見える周期だったような?杏寿郎さんのお誕生日の時期には宵の明星になっていると思いますよ」

「そうか、それも楽しみだ」

「……………」 「…………」


彼と話すのも大好きだけど、この沈黙も大好きだ。無理して話さなくても安心出来るし、杏寿郎さんをより近くに感じる事が出来る。


「太陽も出て来ました」
東の空の色合いが紫紺から橙色へと完全に変わった。新しい朝の始まりだ。


「今日も始まったな!」
「……はい」
くるっと体を向けられると、今度は2つの朝日がすぐ近くにある。彼の双眸だ。

「稽古します?」
「ああ、しかしその前に…」

“後もう少しだけ、恋人の君との時間を味わいたい”

低音の囁きが届いた次の瞬間、私の唇に届いたのは朝の太陽と同じくらい力強く。そして温かい口付けだった。
彼の首に両腕を回すと、2人の距離がぐっと近づく。

夏が終わり、新しい季節がやって来た。杏寿郎さんと過ごす季節がまた一つ増える。
秋はどんな風に過ごせるかな。そんな楽しみを思い描きながら、私も恋人との時間を稽古が始まるまでしっかりと味わった———



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