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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第57章 緋星(あけぼし)喰われしその時に、心炎で天蠍を衝け ✴︎✴︎


「お疲れ様でした……」
「君もな」

煉獄邸に帰宅して、湯浴みを済ませた私達。今は彼の部屋に敷いてある布団で隣り合って体をくっつけている。

互いに任務後の昂った感情のまま、体を数回繋げた。私の体にも彼の体にも同じくらいの花が咲き乱れており、目に入る度にくすぐったい思いが湧き上がる。


「今日から9月ですね。これから秋に段々近づいていくんだなあと思うと、少し寂しいです」
「そうだな。しかし嬉しい事もあるぞ?」

「え……?」
彼の胸にぴったりくっつけていた顔を真上に上げると、優しい雨が数滴自分の唇に降って来た。
そしてぎゅうっと抱き込まれた後、左頬に彼の右頬が柔らかく当てられる。

「こうして君に近づく事がより自然になるし、さつま芋も更に美味しくなるからな!」

「ふふっ、確かに。食欲の秋ですもんね」
彼の背中に回している両掌で数回ポンポン……とした後、私もぎゅうっと杏寿郎さんを抱きしめた。

「ねえ、杏寿郎さん」
「どうした?」
低音がいつもより近くで耳に響くと、心地よく跳ねる心臓の鼓動だ。


「よく”自分の敵は自分”って言うじゃないですか?あれ、本当ですね」
「む……?」

「私はあなたの剣技に今まで数えきれないぐらい、たくさん嫉妬して来てますけど…。こんな風に考える事そのものが”敵”なんだなあって、凄く感じましたよ」

「ほう」

「朝霧に血鬼術をかけられている間、ずっと自問自答していました。滅しなきゃいけないのはその感情が向かっている相手じゃなくて、自分の中にある”思い”なんだって。それに気づいてから私は少し楽になった気がします」

「そうか」

「はい」

「………」

「………」

もう後30分で夜明けがやってくる———と言う事は。

「そうだ、明け星!また観に行きませんか?きっと今日はより綺麗だと思いますよ」

「それも良いが……俺は君ともう少しこうしていたい」
その言葉と一緒に届いたのは、彼からのとびきり甘い口付けだ。



「うーん。じゃあ、折衷案を考えましょうよ。お互いにとって丁度良い所を」

「……わかった」
了承してくれた彼に今度は私からそっと口付けを贈る。


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