第57章 緋星(あけぼし)喰われしその時に、心炎で天蠍を衝け ✴︎✴︎
それから5分後、私達は石室内から出て来た。
「おーお疲れさん、こっちは特に目立った事はなかったぜ」
宇髄さんが見張りを一緒にしてくれていた甲(きのえ)の男性隊士3人と明るい表情で迎えてくれた。
「うむ、それは何よりだ!」
「宇髄さんも先輩方もありがとうございました」
私達4人は音柱と先輩隊士にお礼を伝える。
すると——
「冨岡、頼む」
「ああ…」
冨岡さんだけが石室前に残り、12の炎を点灯した杏寿郎さんと同様、姿勢を正すと一礼をした。
青い刀身が光る日輪刀を抜刀すると、中段に構えて呼吸を”水”に変える。
杏寿郎さんが炎の呼吸を使用して時計回りに回りながら、明かりを灯した「12の炎」と対になる「12の水」
これは水柱である冨岡さんが水の呼吸を使用し、将門塚の周りをぐるっと囲むように配置されている松明を、反時計回りに回って明かりを消していく事である。
炎は昇順の壱ノ型から。水は降順の拾ノ型から。
「水の呼吸・拾ノ型 」
「———生生流転」
回転しながら前進する水龍がフッ……と松明の炎を消した。
「玖ノ型・水流飛沫・乱」 「捌ノ型・滝壺」と続き、漆ノ型は「雫波紋突き」とその派生技である「雫波紋突き・曲」の2つを連続で放って炎を消す。
陸ノ型、伍ノ型、肆ノ型、参ノ型……と流れるような剣捌きと足捌きで消灯していく兄弟子だ。
「弐ノ型・水車」 「弐ノ型・改・横水車」
縦方向に一度、横方向に一度ずつ回ると、それぞれの方向に一回転する水車が松明をフッ……と2回消していった。
「壱ノ型・水面斬り」
両腕を交差した冨岡さんが頭の後ろに回した状態から、勢いをつけて水平に斬りつける。
12の水——これは水の呼吸10個に加え、炭治郎が編み出した弐の型の改と漆ノ型の派生技の2個を合わせた事だ。
始まりの位置、そして終わりの位置でもある松明。
これがゆっくりと空気に混ざり合うように消える。刀を一振りした彼が鞘へと納刀後、一礼をすると小さく息をついた。