第57章 緋星(あけぼし)喰われしその時に、心炎で天蠍を衝け ✴︎✴︎

いつもいつも杏寿郎さんに守って貰っている……
だから今回は私が——


「杏寿郎さんを必ず守ります……頼りない継子ですけど」
顔を彼の方へと向けて決意を込めた声音で、恋人に言う。


「これほど心強い継子は、またといないと思うぞ」

よしよし…と頭を撫でてくれた右手は、そのまま私の左手の甲を包むように上から重ねてくれた。


「これ、よく考えられた血鬼術ですよね。杏寿郎さんは日中に浮かぶ蠍で、私は夜に浮かぶ蠍……。色もお互いの日輪刀の色でしょう？」

「そうだな」

私だけならどんなに良かった事か……。でもそれはさっき彼が言ったように今更嘆いてもどうにもならない。

起こってしまった事は戻せないのだから。


「——炎柱」
「…どうした？」

改まってそう呼んだ私に彼はいつものように返答をしてくれた。

「炎の呼吸は魔を斬る呼吸——。私は以前そう言いましたけど、今それをふつふつと実感しています」

「うむ」

「12鬼月の頸を必ず断ち切り、首塚に献上します。あなたを蠍に喰わせたりなんて私が絶対にさせません」

自分の左手に重なっている彼の右手に１つ口付けを落とした後は、また杏寿郎さんをぎゅう……と抱きしめた。
すると先程と同じように、彼の両腕が自分の背中に回る。




「七瀬はやはり、須佐之男命だな」

「八雲の羽織に八雲の鍔ですからね。じゃあ杏寿郎さんがこの場合奇稲田姫（くしなだひめ）ですか？ 」

「……かもしれんな！であるなら、見事な男女逆転だ」

「えぇ、それは少し複雑ですね……」