• テキストサイズ

炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第56章 山吹のち、姦し(かしまし)ムスメ


『本当にありがとうございます。師範はやっぱり強いです……今日の稽古で改めて感じました』

『それはまあ師匠が弟子に簡単に負けるようでは示しがつかんからな!』

初めて杏寿郎さんと勝負した際にそう言われた。まだ恋仲になる前で……継子になって3ヶ月経ったから、どこまで上達したか見たい。

そう言われたんだよね。


『やっぱり杏寿郎さんは強いです、完敗ですよ』
『師匠が弟子に簡単に負けるわけにはいかないからな』


直近で言われたのは、つい2ヶ月前の事。彼の継子になって一年経ち、階級も2つ上がって上から3番目の丙(ひのえ)になった。
再度勝負をしよう……そう言われた。


「自分と師範の間にある距離って本当に遠いなあって感じるんです。でもだからこそ私は追いつきたい。今両足で歩いている場所が振り返った時に軌跡になって……いつか奇跡になれば良い。そんな思いを抱いて、毎日鍛錬しています」


「私にとって杏寿郎さんは最上の師範なんです」

すると、今まで黙っていた沙希がふふっと笑う。

「どうしたの?」

「いえ、以前もわらび餅を食べている時に同じ事を言っていたなあって。それから炎柱様は七瀬さんにとって最高の恋人なんですよね!」

更に笑みを深める沙希に私は途端に恥ずかしくなってしまう。

「何か客観的に言われると照れるね…はい、そうです。最高の恋人だし、私にはもったいない人!!」

「え?何その話、私知らない……」
栞さんが再び前のめりになって、身を乗り出して来る。

「あれ?そうでしたっけ…」

「こら、とぼけない!私にも教えなさい。これは先輩命令だよ」


それから更に1時間程、私は2人と話をして以心伝心を後にした。




『今日非番で良かった。杏寿郎さんも見回りだけって言ってたから早く帰って来ると良いな』





———その時、後方から視線を感じたが、振り返っても誰も私を見ている人はいない。

………何だったんだろう?疑問が一瞬だけ頭を掠めたが、夜に見えるであろう流星群の事でいっぱいで、特に気に留めずに私は帰宅したのだった。



/ 1010ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp