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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第51章 甘えさせ上手と言われたい ✳︎✳︎ +



「…」

「七瀬、話してくれ」

頬を包み込んだ両頬はそのままに、己の額を彼女の額にゆっくりとあてる。口付けをする時と同じ距離だ。

「はい…あの、口付けたり…色々な所に触れたり…触れて、もらったり…その…私、のなかに…はいっ…ごめんなさい。これ以上は…ちょっと…」

ここまで言ってくれただけでも充分か。
額を離すと両目をかたくつぶり、真っ赤に顔中を染めた七瀬がいる。

君のこの顔が俺はなかなか好きなのだ。
やはり七瀬が自分の事で困っている所を見るのは悪くない。

「つまりは君も出来る限り俺と体を触れ合わせたい。そうなのだな!」

「はい…そ、うで,す…恥ずかしいから、あまり…言わせないでくだ、さい」

「すまん、それはあまり聞いてやれないやもしれん」

「えぇ…」

がっくりと頭を俺の胸に預けながら、七瀬は脱力した。そんな仕草も愛おしいのだ。背中にゆっくりと両腕を回すと、掌に感じるのは彼女の傷痕だ。

ここには七瀬の鬼殺の大部分が詰まっているのだ、と思う。
俺と出会う前に負った傷。俺が知らない彼女の足跡だ。

撫でてやるとくすぐったいと感じたのか、小さく体を震わせながら俺の方を向いた。

「杏寿郎さんが触ってくれるので、ここの傷が少し好きになりました。大きいし、歪だから。触る度に落ち込んだりもしてましたが…今は少しずつ…平気になってます」

「そうか、ならば良かった」

俺が知らない傷ではあるが、今ここを見る事が出来るのは自分だけだ。それが何より嬉しい。

「あっ…そろそろ寝ましょうよ。三時回ってます…」

「む? もうそんな時間か」

なぜ君と過ごす時間はこんなに過ぎるのが早いのだろう。
「おやすみ」と寝る前の挨拶を交わした俺達は、今夜も体を密着させて眠りについた。




✳︎杏寿郎目線✳︎ 終わり

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