第49章 爪に緋色、唇に曙 、心に桃色をのせて +
未菜子さんはそう言った後、気に障ったならごめんね…と杏寿郎さんに謝る。
「ありがとうございます!慣れている…と言うのもおかしいかもしれませんが…あなたからはそう言う好奇のようなものは全く感じられないので大丈夫です」
「流石、煉獄家の男子は逞しいねぇ。所で槇寿郎さんと瑠火さんはお元気なの?半年に一度は必ずいらっしゃっていたのだけど、ここ十年…十五年?かしら。お顔を見てないのよ……」
未菜子さんのやや心配そうな問いかけに杏寿郎さんはほんの一瞬だけ言葉を選ぶ。けれど現状をそのまま彼女に伝えていった。
「そう…瑠火さんの事はとても残念。お体があまり強くないとは話されていたけれど…。でも槇寿郎さんはお元気になられたのね!そこは私も安心だわ」
未菜子さんは涙を少しだけ流した後、指先で雫を拭いにっこりと私達に笑顔を見せてくれた。
本当にお2人に良くしてくれていたんだな…。それが伝わって来て、私の目頭と心も熱くなる。
「あ、長々とごめんね。お食事冷めちゃうわね。それじゃあまた後で声かけて下さい」
ペコリと頭を下げた後は厨房に早々と戻っていった。
「すみません、私も何だかもらい泣きしちゃいそうでした……」
私が杏寿郎さんに目元を押さえながら彼に伝えると、向かい側の席から鼻を強烈に啜る音が響く。
こ、これはもしかして……。