第47章 心炎八雲、甘い色香に混ざり合う ✳︎✳︎ +
「屋台で一緒になった客が酔い潰れていてな。自宅まで送り届けて来たぐらいだ」
「本当に杏寿郎さんは面倒見が良いですね」
こう言う所…見習いたいっていつも思うけど、彼のように寛大な心を持てていないと、なかなか出来る事じゃないよね。
「そうか? 七瀬、帰宅も一緒になった故頼みがあるのだが…」
何だろう……と思いながら聞いてみると、湯浴みの誘いだった。
彼とは恋仲になって一年以上になるのだけど、情事や湯浴みは今だに照れてしまう。
いつかは……気軽に了承出来るようになるのかな。
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「あの、杏寿郎さん…ちょっとお話が」
「何だ、どうした?」
湯浴みが終わり、寝巻きに着替えた私と彼は、脱衣所を出て廊下を歩いている。話しかけたのは良いけど、自分でも顔が赤くなっているのがわかるし、瞬きの数も多い。
すると杏寿郎さんはここで聞かない方が良いと判断したようで、部屋へ行こうと提案してくれた。
彼の部屋へ入り、文机の前に向き合って座る。
な、なんか益々緊張して来た……どうしよう……そのまま固まっていると、杏寿郎さんが私の両手をそっと包んでくれた。大きな両手に覆われ、少し安心した私はふうと長い息をはいて気持ちを落ち着ける。
「そんなに緊張する事なのか?」
「……緊張もしますし、何より今とっても恥ずかしいです」
「よもや、話と言うのは」
あ……もしかして何の事か伝わった……かな? だったら腹を括って話さなきゃ。
「はい、先日の、その……体位、の事で……相談に行って来ました。宇髄さんとお嫁さん達の所へ」
「……何と!!」
めったな事では動揺しない杏寿郎さんの両目が、カッと見開かれた。