第47章 心炎八雲、甘い色香に混ざり合う ✳︎✳︎ +
でもいつかはそう言う事になったら……
「ん?何か言いたい事があるんじゃないのか?」
「うーん。あるけど今は言いません。秘密です」
「む……そうか」
「はい、すみません」
いつもピンと上向きになっている彼の眉毛が垂れ下がった。
うっ……杏寿郎さん、かわいい。
この顔を見るとついつい言いたくなるけど、我慢しなきゃ。
そのかわりに——
「杏寿郎さん」
「どうした?」
唇をなぞっていた指が外され、大きな手が私の両頬を包み込んだ。
双眸に浮かんでいるのは、多くの疑問符。
「あなたが大好きです。本当に好き」
本当の事が言えなくてごめんなさい。
思い切って目を瞑ると、唇にまた優しい優しい雨が降った。
「……君は俺を誘うのが上手いな」
“大好きだ、七瀬。ずっとずっと…側にいてくれ”
耳に、体に、響き渡るのは恋人からの色香の言葉。