第7章 転変の夜 ✴︎✴︎
「こいつはあまり美味くないな」
森の中にある柳の木の下で、銀色の髪の男がそう吐き捨てる。
鬼の夕葉は持っていた若い女の腕を興味を失ったように、ぽいっと投げ捨てた。
胸、尻、首……などの美味しそうと思われる所はその前に全て喰ってしまったようで、彼の周りにその残骸が無造作に転がっている。
ふう ———
夕葉は大きくため息をつく。
「色んな女を喰って来たが、やはり“あいつ”の血が1番……」
彼は真上にある満月を見上げる。
茜色の双眸にその丸い形が映りこみ、群青色の着流しは月の明かりに照らされて綺麗な色合いを放っている。
『今日あたり、術の影響が完全に出る頃か』
ククッと可笑しそうに笑うと口についていた血を親指で拭う。
『お前を喰うのが本当に楽しみだ、七瀬』
こうして色変わりの夜は更けていった———