第44章 継子達の恋、満開
甘味処「以心伝心」の前にて———
私はある友人を待っている。その相手とはカナヲだ。
“炭治郎について相談したい事があります”
体調を崩していた時に彼女から届いた手紙。その直前に合同稽古で会った炭治郎からは暗いものは感じなかった。
……あの様子だと悪い話では…ないんだろうなあ。
うーんと顎に手を当てて考えていると、右横から鈴が鳴るようなかわいい声で自分の名前が呼ばれた。
「カナヲ!久しぶり。元気だっ……?」
言葉尻が途中で切れてしまう。何故なら……
「…うん。元気だよ」
桃色の可憐な着物に同じ色の紅を宿した指先。
いつも顔の右横に一つ結びにしている髪型…ではなく、真っ直ぐと髪を下ろしているカナヲがそこにいた。
杏寿郎さんが金色の髪を一部結んでいるのと同じように、彼女も全部の髪を結んでいるのではなく、艶々な黒髪を後ろで少しだけ結んでいる。
「ど、どうしたの?その格好…。えっとごめん。今日の相手って私で合っているんだよね?」
……と思わず動揺してしまう程に目の前の後輩がどきりとする出立ちだった。
うん、と小さく頷く彼女。
「……あまりにも素敵だから、私、何か落ち着かないよ。とりあえず中、入ろうか……」
うん……とまた小さく頷いたカナヲはやっぱり綺麗だ。