第36章 3日分の炎 ✳︎✳︎ +
「杏寿郎さん。準備出来ましたよ、行きましょう」
「うむ! ありがとう!」
自分の部屋から浴室までの距離はそう遠くはないが、俺は七瀬の手に自分の手を絡めて共に向かう。女子らしく小さな手だが、剣士の手でもある彼女の掌(たなごころ)
繋ぐ度に、触れる度に、七瀬の日常を守ってやらねばと思う。
湯浴みを済ませた俺達だが、結局朝まで三日分の思いを伝え合う結果となり、心と体の結び目がほどけないように、またしっかりと結び直した。
離れていた三日分の距離。縮めてくれたのは七瀬だった。
もう離れたくはないが、それでもまたふとした事がきっかけで、今回のような事が起きてしまうかもしれない。
その時がもしやって来たならば……次回は俺からも歩み寄ってみよう。
いつでも嘘偽りなく自分に思いをぶつけてくれる…
そんなかけがえのない君を手放すなど、もう考えられないから。
〜杏寿郎から見た景色〜
end.