第36章 3日分の炎 ✳︎✳︎ +
『苦い…….』
酸味があるにおいと共にそれを私は口に含み、ゴクッと飲み込む。
顔が歪む。けれど出すわけにはいかなかったので、何とか踏ん張った。
「はあ……」
私は深呼吸を一つ落としながら、口元を手の甲でグイッと拭う。
左側を見てみると、杏寿郎さんがスッキリとした顔をしていて、ゆっくりと体を起こした。
「良かったんだぞ。飲みこまなくても。大丈夫か?」
彼が私の両頬を包んでくれた。こくん、と首を縦にふると安心した様子を見せる恋人だ。
「杏寿郎さんを……」
「ん?」
「全部受けとめたかったから」
「ありがとう」
彼は私に小さな口付けをくれた後、ぎゅう……と抱きしめてくれた。心も体も芯から温まっていく。それは心地いい感覚だ。
「杏寿郎さん……大好き」
「俺も七瀬が大好きだ」