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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第33章 風柱・不死川実弥 +













「ただいま帰りましたー……」

その日の夜、時刻は午前零時を回った所だ。
炎の継子は鍵を使用して開錠すると、煉獄邸の玄関の引き戸をなるべく音が出ないよう、静かに開く。

玄関の明かりをつけると、ふうと深く長い息をはいて静かに脱刀をした。群青色の鞘がぼんやりと電灯に照らされ、鈍く光る。


『まだ帰ってないか、まあ私より先に帰宅するなんてそうそうないけど』

上がり框(かまち)に腰を下ろしながら、草鞋を脱ぐ七瀬。
杏寿郎の草鞋を確認する事がすっかり恒例になっている彼女は、日輪刀を置くべく自室に向かう。






『んっ……背中ってホント塗りにくい……』

湯浴みを終えた彼女は背中の傷に軟膏を塗るべく、上半身は裸のまま座っていた。気圧が変化し始めた為、背中が少し痛むのだ。

煉獄家は男子しかいない。故になかなかこう言った事は頼みにくく、主に一人で塗っている。


『杏寿郎さんに頼んでも良いけどいつもいるわけじゃないし、槇寿郎さんと千寿郎くんにお願いするわけにいかないし…』

「ここ、届かないな……もう!!」


一番塗布したい箇所になかなか手が届かない。
仕方ないと観念した彼女は手拭いに軟膏を塗りつけ、乾布摩擦の要領で背中に ——— そう思った矢先に襖の外から声がかかる。


「七瀬、まだ起きているか?」

「あ、はい。でもちょっと待っ……」

「? どうした?」

「いえ、その、実は………」












「これを使って、傷に塗っていたのか? 何故俺に声をかけない」

「ごめんなさい、いつも杏寿郎さんはいるわけじゃないし、出来る時は自分で……って」


任務から帰宅し、湯浴みを済ませた杏寿郎。
彼は先程彼女が塗りつけた手拭いを手に持ちながら、少し不満げに声を出す。


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