第31章 風を知り、岩を知り、そして全呼吸の理(ことわり)を知る
その後……
にいちゃんは直ぐに生まれ育った家を離れて鬼狩りを始めた。
俺もにいちゃんを追いかけるように鬼殺隊に入り、酷い事を言った事をせめて謝りたいと思い、直接会いに行くと……
『見たところ才能も無いようだから鬼殺隊辞めろ。呼吸も使えないようなやつが剣士を名乗るな』
そして”人殺し”と言った事を謝る俺に…『心底どうでもいいわ、失せろ」と返された。
それでも粘る俺に『テメェみたいな愚図…』こう言われる。
……更に。
「鬼を食ってまで戦ってきた」
にいちゃんはこれが相当頭に来たらしく、そこからはもうまともな会話は出来なかった。この一件以降、にいちゃんには会えていない。
それでも俺は「にいちゃんに認められたい」「にいちゃんの側でにいちゃんを守りたい」という思いを胸に抱き続け、一刻も早くにいちゃんと同じ柱になろうと日々の任務に当たっている。
★
「とっても不器用だけど、とっても優しい人だね。お兄さん」
昼食の仕込みを終え、洗い物をしながら私は左隣で食器を拭いている玄弥にそう言った。
「玄弥そっくり」
「…そうかよ」
「ありがとな」
……そのボソッと言った口調が不死川さんそっくりで微笑ましかった。