第31章 風を知り、岩を知り、そして全呼吸の理(ことわり)を知る
風柱邸にて——
『不死川は確か、字が書けないと聞いたぞ?』
私が風柱に手紙を送った直後、そんな事を杏寿郎さんから聞いた。
読む事は出来るけど、書く事ができないんだそう。
……なるほどね。
—— と言う事で。
今、私は不死川さんのお屋敷の前に立っている。右手には彼の好物のおはぎ。
私が彼に送った内容はこんな文……
【風の呼吸について知りたいから、1週間後の水曜日に都合が良ければ伺いたい】
今日がその水曜日。
彼の都合がよければ、在宅しているはず。
なので不死川さんの好物を持参し、一縷の望みを胸に抱いて、ここにやって来た。
だって返事書けないって言うんじゃ、こうするしか方法がなくって…。