第28章 神器と共に炎の神楽を舞い踊れ ✴︎✴︎ +
七瀬達が立ち去って10分後……青い瓦屋根に1人の男が姿を表す。
「あの猪、まさか俺の気配に気づくとはな。驚きだ」
神社にかけていた術を完全に解いた夕葉はそう呟いた。
『須佐之男の奴の封印を壊すのは、なかなか骨が折れたんだが…』
左手に持っていた祠の一部分である石を彼はグッと握りつぶす。
すると、パラパラ……と小さな砂になって、夕葉の掌の間からそれはこぼれ落ちた。
『結構気に入ってたんだけどな。この神社。根城に出来なくて残念だ」
ニヤッと笑っていると、突然彼の脳に声が響く。
「夕葉……直ちにこちらに来い」
それは自分がどうあがいても逆らう事ができない存在…鬼舞辻無惨のものだった。鬼はふう、と1つ大きなため息をつく。
『始末はされないと思うが、目だけじゃ……済まないだろうな』
下弦の伍の累同様、彼はその見た目から無惨の”お気に入り”でもある。累が討伐された後は特にそれが強くなっていた。
ベベン。
ベベン。
琵琶の音色が夕葉の姿をその場からスウ……と消していく。
夕葉が呼ばれたのは鬼の始祖である無惨の本拠地、その名を”無限城”
そこは鬼殺隊の隊士が未だかつて、誰も足を踏み入れた事のない未踏の地。