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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第4章 炎柱・煉獄杏寿郎の息吹 +




「柱になったから何だ。くだらん、どうでもいい。どうせ大した物にはなれないんだ。お前も……俺も」

『くだら、ない?』

母・瑠火が数年前に亡くなった。
あれだけ情熱を持ち、自分と弟へ剣の指導をしてくれていた父から、俺達は相手にされなくなった。

目を見てくれなくなった。
口を聞いてくれなくなった。

そして —— 道標にしていた広く逞しい背中が目の前から消えてしまい、追えなくなった。


この日、俺は久しぶりに父の部屋を訪ねた。先日苦労しつつも十二鬼月を討伐した事により、炎柱として認められた為だ。
柱になった事を報告すれば。ややもすると、喜んでくださるのでは —— そんな思いから父に伝えた。


結果は冒頭の通りだ。

くたびれた布団に横たわる父・槇寿郎は自分の姿を一瞥もせず、片肘をついて書物を読んでいた。
襖は開け放たれ、庭から爽やかな風が吹いて来る。しかし、室内に充満しているのは酒のにおいだ。


「5つ全ての呼吸は日の呼吸の模倣。雷・岩・風・水・そして炎……」

『模倣?』


「所詮は派生だ。猿真似にすぎん」
「………」



「実にくだらん」






「失礼しました」

声をかけても、入室した時と同じように俺の姿は全く見てくれなかった。襖を静かに閉めた後は父の部屋から退室する。


『くだらん、所詮は派生だ』

脳内はその2つの言葉が充満していた。廊下をそのまま歩き進めていたその時、正面から声をかけられる。

「…兄上」

自分や父と同じ金色の髪に、緋色の双眸。二又に分かれた眉毛の人物は千寿郎。歳の離れた俺の弟がそこにいた。


「父上は喜んでくれましたか?俺も柱になったら…認めて貰えるでしょうか」

少しだけ期待に満ちた目で自分を見上げている。俺はほんの少しだけ双眸を細めて弟を見つめ返した。

すると互いの視線が交わった。


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