第28章 神器と共に炎の神楽を舞い踊れ ✴︎✴︎ +
二つ目の鳥居をくぐった時に、夕葉の幻術が全員にかかっていた。
杏寿郎もまた鳥居をくぐる際、気色の悪い感覚を全身に感じたが、すぐ近くにいる七瀬の姿を確認しながら足を進めたのだ。
「綺麗な神社だね」
「……ああ、そうだな」
二人の目の前には水色の瓦屋根に、赤を基調とした社殿が見える。
炭治郎、禰󠄀豆子、善逸、伊之助の姿はそこにはなく、杏寿郎と七瀬はゆっくりと社殿に向かって行く。
ザッザッザッ…とそのまま歩いて行くと、あっという間に社殿に辿りついてしまった。
「ねえ、杏寿郎」
「どうした、七瀬」
炎の柱は先程から感じている小さな違和感を確定させると、鞘を左手に掴み、鯉口を静かにゆっくりと切る。
『間違いないな、彼女は……』
「ここからは私一人で行きたいから、あなたは引き返して良いよ」
にっこりと可愛らしい笑顔で、炎柱に笑いかける七瀬。しかし、杏寿郎はそれに応えない。
「どうやら君は俺が知っている七瀬とは随分と違うようだな。何者だ?」
「やだな、刀しまってよ。危ないじゃない」
じわっと涙を両目に滲ませる七瀬だが、日輪刀の切先を向けている杏寿郎に迷いはない。
「もう一度問う、お前は誰だ。俺を七瀬の姿で惑わせても無駄だぞ」
「……なんだよ、お前ら恋人同士じゃねーのかよ」
七瀬の姿をした”何か”は、先程までの口調とは様変わりをし、ぞんざいな言葉遣いで炎柱に問いかけて来る。嫌悪感をこれでもかと滲ませる双眸は、既に縦に瞳孔が割れていた。
「確かにそうだが、親しい間柄でないとわからない事が多々あってな。残念ながら調査不足だ。七瀬は俺にいつも敬語を使うし、呼び捨てにする事もない!!」
「本当に腹が立つやろーだぜ。しかもうざったい」
「うむ! 奇遇だな、俺も君に大層腹が立っているぞ!」
七瀬の姿が一瞬だけ炎に包まれると、その者は真の姿をようやく現した。