第28章 神器と共に炎の神楽を舞い踊れ ✴︎✴︎ +
木曜日の夜、二十一時。赤坂氷川神社にて…
境内の中には無数に転がる女、女、女の死体。いずれも死んでから間もない遺体ばかりだ。
その中から長身の男が現れ、一人の女の体から一部分をブチっと引きちぎり、手に持って眺める。
肘から先だけの細く白い右腕だ。
男は手首から掌を舌で辿ると、その先にある繊細な指を一本口に含んだ。
鋭い鬼の牙で、肉と骨がバキバキと噛み砕かれていく。
指を全て食した後は、残りの部分だ。
彼の口の周りは赤黒い血液で染まっており、時々それを指の腹と舌で拭い取って再び女の血の味を堪能する。
「……美味いな。やはり十代の女は血の鮮度が違う。お前達は優秀だな。美味い女ばかり捕らえて来る。流石だ」
鬼の夕葉は続けてその女の足首を引きちぎりながら、目の前にいる八つの頭を持つ大蛇に話しかける。
「来たる明日。俺が最も喰いたい女がここにやって来る。七瀬は俺の獲物だ、丁重に扱うように。あいつ以外は好きにして良い。頼んだぞ」
大蛇は夕葉に頭を下げると、神社の裏手にズル…ズル…とその大きな体を引き摺るようにしたのちに、フッ……と姿を消した。
『さて……俺はもう一仕事しておくか』
持っていた女の足を全て喰い終わると、両方の掌から丸い光をボゥ……と出す。そして両手を伸ばした。
「血鬼術—— 幻炎の真宵(げんえんのまよい)」
神社全体が青白い光りで覆われたが、すぐにまた元の空間に戻った。
「よし、こんなもんだろ。さて、この三つを抜けられるか? 心・技・体……剣士にはどれも欠かせないよな? 七瀬」
夕葉は腕組みをしながら、満足そうに神社の境内を見て呟く。