第27章 岩戸から出てくる日輪 +
朝の稽古の前に謝罪をしに行こう。
彼と揃いの紺の道着に着替えた後、一緒に槇寿郎さんの部屋へと向かう。
「着きましたね」
「ああ」
声をかける前に、杏寿郎さんが深呼吸を一つ。
「おはようございます! 父上、杏寿郎です、今朝はお話したい事がありまして!! 七瀬と出向き……」
「お前の声のデカさは相変わらずだな……」
襖の前に2人で正座をし、部屋の中にいる槇寿郎さんに話しかける。すると —— 杏寿郎さんが言葉を最後まで言い切る前に目の前の襖がスッと開き、槇寿郎さんが出て来たのだ。
朝の光を受け、きらきらと輝く。恋人と同じ金色の髪。二つに毛先が分かれた眉毛は垂れ下がっており、双眸には柔らかな感情が浮かんでいる。
昨日来た時と全然違う。きっとこれが本来の槇寿郎さんなんだ。
「おはよう、杏寿郎に七瀬さん。話とは何……」
「父上! 昨日は我が継子が無礼を働きまして、誠に申し訳ありませんでした!!!! 」
「わかった! わかったから、音量をもう少し落とせ…。うるさくてかなわん」
目の前の元・炎柱は両腕で耳を塞ぎ、苦痛を訴えながらも息子である杏寿郎さんをを真っ直ぐ見つめている。
それに感激したのだろう。彼はまたも大きな声で叫んでしまい、槇寿郎さんから雷を落とされてしまった。
「父上! 俺はとても嬉しいです!! 一緒に朝食を食べに行きましょう」
「おい! お前、人の話を聞かん所も変わらんな……」
「おはようございます、槇寿郎…さん」
嬉しい、凄く嬉しい。
これがきっと煉獄家の今までの風景なんだ。この瞬間より再開された久しぶりの朝に、私は感激したのだった。