第27章 岩戸から出てくる日輪 +
〜槇寿郎から見た景色〜
努力を重ねに重ねて、ようやく柱になった時は嬉しかった。父に報告した際は彼も一緒になって涙を流しながら喜んでくれた。
しかし —— それを見届けると、父は亡くなる。
「槇寿郎が柱になるまでは何としても生きる!! 」
日に日に病で弱っていく体に鞭を打ち、母に強い気持ちを訴えていたとの事だ。
それから瑠火と出会い、彼女と夫婦になり、二人の子供を授かった。子供達と瑠火、四人で過ごす日々はとても充実していた。
任務がない日は子供達に剣術の指導をしたり、隠に子供達を任せ、瑠火と埼玉の川越へ遠出した事も数回ある。
細やかだが、穏やかな幸せ。
それがずっとずっと続いていく物と思った矢先、妻が病にかかり、やがて俺の前から忽然と姿を消した。
彼女が亡くなった時期と同じ頃、炎柱の書に書かれている内容を知った。
日の呼吸———
それは「始まりの呼吸」とも言われている。全ての全集中の呼吸の源流。
その”日の呼吸”について書かれている「歴代炎柱の書」を読んだ俺は、希望と言う光の大半を暗い底なし沼に吸い込まれてしまった。
どんなに炎の呼吸を極めても、たどり着けない頂き。どんなに努力を重ねても、こじ開けられない領海。
惨めだった。
悲しかった。
悔しかった。
『ご無事のお戻り、何よりでした』
任務から帰ってきた際、いつもそう声をかけてくれた瑠火。
病にかかり、なかなか起き上がる事が難しくなっても、可能な限り出迎えてくれた妻。
そんな「当たり前」さえも、自分の前から忽然と無くなる。
ずっとこの先も一緒に過ごしたかった大事な存在が先に旅立ってしまい、希望の光が消えてしまった。