第24章 霞む記憶が晴れた先に +
「すみません。私、さつまいもに嫉妬した事がありました…杏寿郎さんに、あんなに美味しそうに食べてもらって良いなあって」
「ははは!そうか…」
よしよし、と頭を撫でられる。今日はこれで3人目だなあ。こうしてもらうの。
その後は客間に戻って、食べている途中だった甘露煮と、甘いカステラを分け合って食べた。
雛鶴さんの言う通り、とびきり美味しいものだった。
「嫉妬してくれる杏寿郎さんも素敵でしたよ」
「む……そうか」
「はい、凄くドキドキしてしまいました」
カステラを食べた後、こっそりと彼の耳元でそんな事を言ってみた。私がまた杏寿郎さんの事を好きになった瞬間だ。
それから、無一郎くんにはキッパリと手合わせの申し出を断ったのだけど。
「つまんないなあ。じゃあまたの機会にね」
……と言われた。
どうしてそんなにやりたいのかを聞いてみた所。
「胡蝶さんに一本取った時の君、すごくイキイキしていたから」
だって。
そう、なんだ。
天才剣士にそんな風に言ってもらえて光栄だったけど、私は再度、断りの念押しをした。
柱の方との真剣勝負は本当にもう勘弁なので……ね。
………と思っていたけど。
この日から数ヶ月してその柱との真剣勝負が再度やってくる事を、この時の私はまだ想像もしていない。
『また催促してみよう』
ふろふき大根を食べながら、無一郎くんは脳内でそんな事を思案していたらしい。