第20章 ほどけない夜が明けた後は ✳︎✳︎
「……おはようございます」
「おはよう」
「いつから目が覚めてたんですか……」
「君が目を覚ます少し前から」
ん?それって、大分前じゃない……
もう………と。私が少しむくれた顔をすると、杏寿郎さんは左頬を優しく包んでくれる。大きくてあたたかい掌に心が安心した。
「かわいいと言うのは今の君のような顔を言うのだが?」
「からかわないでください」
「からかってなどないぞ」
杏寿郎さんはそう言った後、自分の体をスッ…と起こす。
そして、私の体の上に跨るとさっき包んでくれた左頬をゆっくりと撫で始めた。
彼が自分を見る眼差しは継子ではなく、恋人を慈しむ —— そんな雰囲気を醸し出している。
「本当の事だ。君はとてもかわいい」
「んっ、」
口付けが瞼と鼻、両頬に落ちる。くすぐったさと気持ちよさで体が少し捩れた。
「何度伝えても足りないぐらいにな」