第20章 ほどけない夜が明けた後は ✳︎✳︎
✳︎七瀬から見た景色✳︎
チュンチュン………
雀が可愛らしく鳴く音が聞こえる。
ん、朝……?
目をこすりながらゆっくり開けてみる。すると目の前に杏寿郎さんの顔が視界いっぱいに入って来た。
「わっ、かわいい寝顔だなあ」
いつもしっかりと見開かれている双眸は閉じられていて、吊りあがっている眉もシュンとしたようにたれ下がっている。
形の良い小鼻からはスースー……と規則正しい呼吸。そして、瞼の下に生え揃っている濃く長い睫毛。
うーん。私より長いよね、これ。
良いなあ……と思い、毛束の多いそれに恐る恐るそうっと触れてみれば「ん……」と言う声が漏れてドキッとした。
あれ?もしかして、これって……常中の呼吸なんだろうか。だとしたら……と考えていた刹那 ———
「”かわいい”は男に言う言葉ではないな」
目の前の2つの日輪が突然開いた、かと思うと私の唇にちう、と温かい彼の唇が届く。
「んぅ」と音が漏れてしまう、少し深めの口付け。
彼に一通り口の中を堪能されると、銀糸を引きながらゆっくりと杏寿郎さんの唇が離れて行った。