第19章 獅子なる星が降る夜に ✳︎✳︎ +
✳︎七瀬から見た景色✳︎
「寒いなあ」
冬の訪れを朝晩の気温で感じるようになって来た十一月中旬。
私は羽織を二重三重にする、と言ったできる限りの防寒をして煉獄邸のお庭に出ていた。時刻は二十三時を回ったあたりだろうか。
先週街を歩いていた時、昨日から今日明日にかけてしし座流星群が見れると聞いて、心待ちにしていたのだ。
今日が非番で本当に良かった。
まだ家族全員で暮らしていた頃、父が兄と私を自宅の庭に連れて出てくれて三人で流星群をみた。
本当に文字通り、たくさんの流星が夜空から降りそそぐ様を目の当たりにして、私は小さいながらも感銘を受けた。
願い事、お兄ちゃんとたくさんしたっけ……
今日もたくさんお願い出来ると良いな。そう思って夜空を見上げていると、東の空からキラリと流れ星が現れた。
「来た!」
その一つの流星を筆頭に息つく間もなく、星が流れ始めた。
凄い……!小さい頃みたものと同じだ……。キラリ、キラリと次々に星が現れる。
あ!願い事しなきゃ!私は急いで目を瞑って願いを思い描く。えっとえっと……
『師範に思いが届きますように……』
心の中で三回繰り返した。どうか、どうか叶いますように。
その師範、今日は任務に出かけており、不在にしている。
「一緒に見たかったなあ」
つい、声にも出してしまった。
ゆっくりと周りを見渡して、誰も聞いてなかった事にホッとした私は寒さも忘れて、引き続き夜空の星達に見入っていた。