第16章 甘露煮と羨望
「それでは師範。行って来ます」
煉獄邸の玄関の上り口で草履を履き、私は彼にそう言った。
無事に足首も完治したので、今日から任務再開。今回は炭治郎との合同任務だ。
「ああ、気をつけてな」
「ありがとうございます。師範もお気をつけて」
今日の師範は久しぶりに自分の担当警護地区の見回りらしい。
「先程のだご汁、初めて食したが……」
「あれは美味いな!また作ってくれ」
「そう言って頂けて嬉しいです!またさつまいもをたくさん入れますね」
「うむ!」とニコッと笑った師範は私の頭にぽん、と手を乗せて撫でてくれた。
今日は任務が終わった後、一度自宅に戻る予定にしている。
足首を捻挫したので、この3週間弱全く帰れなかった。
同居人の4人……特に家事を担っている炭治郎には本当に申し訳ないなあと。
とにかく今のあの家は男所帯。
気になる……ちゃんと生活できているのだろうか。少し母親のような気持ちになる。みんなとはたった1つ2つしか変わらないけど。
そう言えば以前、善逸に『お母さん』って言われそうになった事あったなあ。私はそんな事を考えながら、炭治郎との待ち合わせ場所に急いだ。