第3章 起きて進め
——暗闇の中、声が聞こえる。私を呼ぶ大好きな声が。
「七瀬………———」
「巧……何?なんて言ったの??……待って!!」
私はハッとそこで目を覚ました。ゆっくりと体を起こすと、寝台がいくつかみえる。どうやら蝶屋敷に運ばれたようだ。周りをゆっくり見回すと今は私1人しかいない。
両手首に包帯が巻かれている。背中もジンジンと痛い。そうだ。あの銀色の髪の鬼にやられて………
あれ?確かあの時、私を喰うって言ってたよね?
どうして生きてるんだろう?そうだ、巧は?あれからどうなったの?
1人右手を額に当てて色々考えこんでいると、ガラ……と部屋の引き戸が開く音がした。
「良かった。目を覚まして…」
入って来たのは神崎アオイ。
私と同じ最終選別で入った蝶屋敷で働いている同期の女の子で、歳も同じ。ものすごくしっかりしているので何かと頼っている。
聞いてみれば私は丸5日寝ていたらしい。
「何か口にする?」と聞かれたので、温かいお茶を持って来てもらった。
アオイちゃんが寝台の側にある棚に置いてくれる。
「ありがとう」と私はお礼を言い、お茶を一口啜る。
そして先程から頭の中でなかなか整理しきれていない情報を落ち着けたい、と思ったのでアオイちゃんに質問をしてみた。