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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第14章 蛇柱、伊黒小芭内 +




「小芭内、人が悪いぞ!」
「さて、何の事だ?……杏寿郎」

炎柱は口元に笑みを浮かべ、隣の友人にグッと顔を寄せると、小芭内に巻きついている鏑丸が「シャー」と反応する。


「わかっているのだろう?甘露寺の事を聞いている!」
「………そろそろ想いを伝えようと思っているが」

「む!そうなのか」
「ああ、互いに明日もわからん命だ。伝えずに後悔するより、伝えて後悔と言うヤツだな」


杏寿郎は驚きと同時に、友人の発言に感心をした。確かにそうだ、と。鬼殺を生業とする隊士である自分達が、明日もこの世にいるとは限らない。


『自分の血は汚れている。そう思って彼女に気持ちを伝えるのは控えていたが、大切なのはやはり”今この時”だ』

小芭内は改めて胸の中で決意を固める。
そして ——


「お前も励め」
「元よりそのつもりだ。今日も任務に全力で挑む!!」


『……鬼殺の事を言ったわけではないのだがな』


“この男らしいな”と包帯の下の口元がふっと緩んだ小芭内。
彼は自分と杏寿郎の間に置いてある皿から、一口大の菓子を突き匙(=フォーク)でぷすっと刺すと包帯の隙間から素早く口腔内に入れた。

ゆっくり咀嚼すると、作り手の気持ちがじわりじわりと伝わって来る感覚になる。するとどうだ。彼の体がほんのりとあたたかくもなった。

小芭内は幼少期に幽閉されていた為か、三日食事をしなくても平気な体質だ。だから食に対する欲も希薄である。しかし、想い人の蜜璃が作った物は食が進む事が多い。


「甘露寺は剣術だけではなく菓子作りにも長けていて、本当に俺の自慢だ!!わっしょい!」


二人が食しているのは、蜜璃お手製の”すいーとぽてと”なる甘味だ。今朝方近くまで来る用事があったから……との事で、恋柱から蛇柱へお裾分けされた物である。


『今朝会ったばかりなのに、もう君の顔が見たい。甘露寺……』

小芭内が胸いっぱいに恋慕の想いを染み渡らせている所へ響くのは、友人の「わっしょい」なる掛け声だ。


「お前のそれを聞くと、力が湧いて来るな」
「ありがとう!!先日沢渡にも同じような事を言われた!!」


“わっしょーい!!!”

蛇柱邸の縁側に、一際大きな炎柱の掛け声が響いた。


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