第66章 I want to be scarlet ✳︎✳︎
その隠の女の子は後輩隊士で霧の呼吸を使う藍沢沙希と同期だったはず。
元々雷の呼吸を使う隊士だったそうだが、任務中に左足を複雑骨折した影響で以前のように呼吸が上手く使えなくなり、隠に転向したと聞いた。
名前は大迫亜佐美。
「その子、知ってる。後輩の同期で……」
「え、大迫を知ってるんですか」
そこから話は一気に恋の話へと変わった。
文のやりとりをよくしているし、2人だけで出かけた事もあるんだそう。
付き合うまで後ほんの少し……と言った様子だ。
「剣もですけど、俺恋でも肝心な時全然ダメで……本当に嫌になるんです」
ああ、何とかしてあげたいな。おせっかい虫が私の心で騒ぎ始める。
「そうだ、さっきどうして好きな子がいるかって聞いたんですか?」
「うん、それはね……」
理由を話すと、彼は即座に「絶対助けます」と言い切った。
「多分その気持ちなんだと思う。真野くんや私が鬼に向かっていける理由って。自分よりも大切に思える人……自分以上に自分の事を理解している人が危険な目に遭いそうになった時に、心の底から守りたいと思えるかどうか」
「沢渡さんは炎柱と恋仲なんですよね」
「え?うん。よく知ってるね…」
「2人でいる所を見かけたと言っていた人達全員が、師範と継子の雰囲気じゃなかったって………」
………うわあ、恥ずかしい!
顔の表面温度が一気に上昇してしまう。
「俺、炎柱のようにもなりたいんですよね」
「あ、それ私もだよ。同じだね!」
師範の彼をこんな風に言って貰えて、本当に嬉しい。
「後は同じ呼吸を使う風柱もです!一見めちゃくちゃ怖い印象ですけど、すっげー優しいし、強いですから」
そう、不死川さんはそんな人だ。
この事を知っている隊士は一握りだろうけど、自分と同じように感じている人が確実にいるのだな、と分かると胸がほっこりとあたたかくなる。