第7章 試練
千寿郎が部屋を出て行ったところで、ふと月奈は武器について思い出した。
「そういえば、最終選別の時に使用する武器について天元様からお借りしました。手甲鈎、という代物です」
ゴトリという音を立てて机に置かれたそれは、鈍く光る金属で作られている。
槇「てこうかぎ?…忍びの中での武器か」
煉「して、どのように使用すると?」
月奈は自分の手に嵌めて拳を握る。手の甲に装着された武器を見て、槇寿郎と杏寿郎は物珍しそうに唸った。
「飛び道具は、修練に時間がかかるとのことでしたので、体術と合わせて使えそうな武器を、とお嫁さん達も考えくださったようです」
両手に装着できるよう二つ借りているが、最終選別の日までに両手使用まで上達できるかによる。無理な使い方をすれば、自分のケガに繋がると説明されていた。
煉「むぅ、見たことがない武器だな。よく分からんが宇髄が考えて渡したならば問題ないだろう!体術に合わせて使用できるというところが月奈に向いている武器だと俺も思う!」
槇「珍しい武器もあるのだな、忍びというのは。体術はどこまで上達したんだ?」
「…毎日傷だらけですが、少しずつ上達はしていると天元様からは言われました」
鼻血や口の中を切るのは日常茶飯事になっている。
こんな日常、鬼に襲われるまでは考えられなかった日常だ。
最初の頃は、朝起きれば体がギシギシと悲鳴を上げていたが、今はそれもなく動きも軽くなってきている気はする。
千「月奈さん、お湯が沸きました、どうぞ!」
廊下から千寿郎が声をかけてくると、槇寿郎は少し考えるような素振りをした。
槇「月奈、湯浴みが終わったら、少し鍛錬場に来てくれるか?」
はい、と特に疑問に思うこともなく月奈はすぐに頷いて湯殿へと向かった。
その姿を見送ると、槇寿郎は「?」という表情をした杏寿郎と千寿郎の二人に視線をやる。
槇「お前達も道着に着替えて来い。千寿郎は月奈に新しい道着を用意してやれ、千寿郎のものなら着られるだろう」
月奈の鍛錬成果を見てみよう、と言い部屋を出て行った。部屋に残された二人も訳が分からないまま、槇寿郎に言われた通りに動きだした。