第7章 試練
煉「千寿郎!!手ぬぐいを出してくれ!」
千「兄上!?…月奈さん!?ケガでもされたのですか!」
門をくぐると、千寿郎が掃き掃除をしているところに出くわす。
抱えられた月奈が持っている手ぬぐいが血に染まっているので、千寿郎はザァと青褪める。
「違う!千寿郎さん!鍛錬中に鼻血が出ただけです!ケガはありませんから!」
おろしてください!と杏寿郎に訴えるも、結局居間まで抱えられたままだった。もうほぼ止まってます、と言っても聞いてくれない。
千「あぁ、よかった。血は止まっているようです。驚きました…」
「大丈夫って言ったじゃないですか…。杏寿郎様も大げさです!」
キッと睨むと、むぅ…と困った顔をした杏寿郎がいる。
鍛錬していればケガなんて付き物でしょうに、と呆れるが、心配してくれているのだと思うと許してしまう。
「今、天元様のところで体術の鍛錬をしていると知っていて、ケガに驚く意味が分かりません。お嫁さんと組手を実戦さながら行っているので仕方ないのですよ」
分かったらそろそろ離してください。と言った月奈は未だ、杏寿郎に横抱きにされたままだ。
(また鼻血が出そう…顔が近い近い…落ち着け自分)
兄上、と千寿郎が促すとようやく離してくれた。
手ぬぐいを外し、出血がないことを確認すると月奈は一息ついた。
千「それにしても、傷が増えましたね」
「あぁ、仕方ないですよね。でも鍛錬は楽しいですよ!」
しばらく、どのような鍛錬をしているか千寿郎と話していると、ふと成長できているのか焦っていたことを思い出す。
煉「体に染みついた基本の型は簡単に忘れられないだろう。しかし、宇髄の言う通り、鬼は形式通りになど戦ってはくれない!予想もしない攻撃に対処できるように、反射的に動けるように感覚を鍛えるのは一つの手だな!」
槇「なんだ月奈が来ていたのか。…ずいぶん鍛えられているようだな」
月奈の姿を見て苦笑した槇寿郎は、湯浴みしていったらどうだ。と提案した。
鍛錬用に誂えた道着を見てハッとする。そういえば地面に何度か転がされた、汚れていて当然だった。
「汚れたまま上がってしまいすみません…」
千「兄上がここまで連れてきたのですから、月奈さんが謝ることはありませんよ。すぐに湯の準備をしてきます」