第7章 試練
(的確に注意が甘い場所を狙ってくる)
月奈は攻撃をなんとか受け流しながら、攻めに転じようと考えているが、その一瞬が見つけられない。
ぷはっ、と我慢していた息を吐きだした瞬間にまきをが声を上げた。
ま「月奈、気を抜いたらやられるよ!」
一瞬だけだった。再び息を吸い込むまでのわずか一秒、集中力が途切れたことを見抜いた須磨の蹴りが飛んでくる。咄嗟に腕で防御態勢をとったが、防ぎきることが出来ずにこめかみを蹴り飛ばされた。
須「うわぁぁぁ!月奈ちゃんごめんねぇぇ!でも天元様が手を抜くなって言うからぁぁ」
天「俺のせいかよ…」
ぐらぐらと揺れる頭を押さえて起き上がると、まきをが背中を支えてくれた。
雛「天元様、そろそろお迎えが来る時間ですよ。ケガの手当てをして休憩させてあげないと…」
「え、もうそんな時刻ですか?手当ての前に顔を洗ってきます」
井戸でポンプの口から出る水で顔を洗う。
(沁みる…っ!!!!)
体術鍛錬が始まってから、生傷が絶えない。
最終選別まで猶予がそれほど無いこともあり、鍛錬の勢いが凄まじい。
(傷はどうでもいいが、鍛錬の成果が出ているか分からない)
ジリジリと焦る気持ちを抱える月奈の目の前に手ぬぐいを差し出したのは天元だった。
天「焦ってんなぁ、自分では分からないだろうが力になっているぞ。俺の嫁が強いだけだ!気にすんな!」
「…力になっているのでしょうか…、というか最後に嫁自慢入れてきましたね」
自慢は派手にしねぇとな!と笑顔で言われると、何の返事も出来なくなる。顔を拭って、ジトリと天元を見上げると頭を撫でられた。
天「今日の、最後の咄嗟の防御は反応が良かったじゃねぇか。最初にここに来た時だったらもっと派手に吹っ飛ばされてただろうな」
確かに、と頷いた。
自分の能力が向上していないわけではなく、向上した瞬間に嫁三人が攻撃の段階を上げて行っているのだ。だから追いつけず毎回ケガだらけになるのも当たり前の話。
考えてみれば単純だった。
「ですが、体術だけでこの状態では…武器を持ったら…」
あれ?私お嫁さん達に殺される?と乾いた笑いが出てしまう。