第7章 試練
天「月奈、お前地味だな」
そう言ったのは、音柱の宇髄天元だ。
派手なことが大好きな祭りの神、初対面で本人からそう言われた時に月奈の中では変な人、と印象がついてしまった。
「地味…ですか?今関係あります?」
鼻血を手で拭いながら半笑いで天元に視線を送る。
月奈は現在、天元の元で最終選別に向けての体術鍛錬を行っていた。手合わせをしているのは宇髄の嫁”達”だ。
(まさか、三人も嫁がいるなんて…それも皆くのいち。身のこなしが軽い)
ま「月奈!須磨相手にへばってるようじゃダメだよ!」
雛「まきを、これでも大分組手についてこれるようになっているじゃないの、無理させてはダメよ」
須「雛鶴さぁぁん!!まきをさんがひどいです!確かに私は味噌っかすですけれど、言い方ひどいですよぉぉ!」
まきをと呼ばれた女性は、肩甲骨あたりまでの黒髪を後ろで高く結い上げ、前髪は茶色がかっている。眉をキリッと吊り上げ月奈に檄を飛ばすが、不満を叫びながらも攻撃を休む間なく打ち込んでくる須磨に対応することに必死な月奈には聞こえていない。もう一人の嫁、雛鶴は天元とともに縁側から冷静な表情で組手を見ている。
天「地味っていうのはな、お前の体術が基本的で綺麗だからつまんねぇってことだよ。もっと派手に動け、自由にやってみろ。鬼は形式通りに相手してくれないからな」
反射的に体が動く月奈は、自然と幼い頃から習っていた体術の型が出てしまう。
(確かに教えられた通りの型でしか対応できていない。変則的な攻撃を対処しづらいのは確かなんだけれど…自由ってどうすればいいの…)
悩む月奈に、須磨は結んでいない黒髪をなびかせて次々と攻撃を仕掛けてくる。味噌っかすと口癖のように言うが、そんなことはない。