第7章 試練
煉「なるほど!ですが、前線に立つならば鬼を斬首する剣術が必要です。胡蝶のような毒を使う剣士となれば話は別ですが」
館「月奈がしのぶのような特殊な剣士になることは難しいと私は思っているよ杏寿郎」
この意味が分かるかな、とお館様は三人を眺める。
首を切れない、ただし鬼と応戦することもある。鬼を倒す唯一の武器である日輪刀を持たない鬼殺隊。剣士になるとは明言していない。
下座に座る三人はハッとお館様を見る。
館「気付いたようだね。敏い子たちで嬉しいよ」
冨「剣士ではなく、隠ですか」
館「前線に出したくない君達と、鬼殺隊に入りたい月奈。そのどちらの希望も叶うとは思わないかい。稀血である以上、危険はどうやっても付き纏う。それならば、守る力がある場所で生きて欲しい、と思うのは私だけではないだろう?」
月奈はゴクリと唾を飲み込み、手をついて三人に頭を下げる。
「鬼と対峙できない腰抜けと言われても仕方ないと思います、そんな気持ちで鬼殺隊に入ろうということも失礼だと思っています。ですが、自身で出来ることは少しの自衛と鬼から逃げ通すことだけだと考えました。どうか最終選別に行かせてください」
(自分が前線に立つことは足手まといにしかならない、それは以前の襲撃で悔しいほどに分かってしまった)
確かに三人ともが願っていた。
自分の傍にいれば守ってやれるのに、と。
ーお館様はさすが思慮深いお方だ。俺達と月奈の希望を叶える案を提示された。
ゆっくりと瞬きをして杏寿郎は、覚悟を決める。
煉「俺はお館様の提案に賛成いたします!最終選別は厳しいものとなるだろうが、突破出来た暁には鬼殺隊の隠となる。後は前線に立つ俺達が鬼を滅すればいい話だ!」
し「それもそうですね」
単純な話だな!と笑う杏寿郎に、しのぶは苦笑して同意する。
冨「…最終選別は、ともすれば死ぬこともある。それでも挑戦すると?」
義勇は月奈の覚悟を確かめるように見つめる。
(心配をしてくださる、やはり優しいですね冨岡様)
「家族に守られ生き永らえた命、無駄にしたくはありません。強くなりたいのです」
そう言うと、月奈は穏やかに微笑み、義勇もまた少し笑った。